ズワイガニ 牡蠣 甘エビ
寒ブリ 魚醤「いしる」 郷土料理
コーナートップへ

郷土料理 発酵食に受け継がれた能登にしかない食文化

こんかいわし写真

取材協力:郷土料理の宿さんなみ 船下智宏さん

べん漬け

取材協力:輪島網元やまぐち 山口泉さん

いしり三種

旅というのは、その土地らしさに触れることが愉しいんだと思いますよ。風景とか、会話とか、料理とか。

 能登へ来たのなら、能登でしか見ることのできない風景に身をおいて欲しいし、能登でしか食べることのできない料理を味わって欲しいと思う。能登にある多くの民宿や旅館では、当たり前に能登の郷土料理が食卓に並ぶ。能登では郷土料理の大半が発酵食。魚がいつでも獲れることが保証されない時代に生まれ息づいた、保存のための知恵と技術は、いつしかこの土地の郷土料理として代々受け継がれてきた。それは「こんかいわし」や「べん漬け」などのいしりを使ったさまざまな料理であったり、「ひね鮨」や「かぶら寿司」であったりと、旨みが熟成されてようやく仕上がる旬のものとは対極にある食ばかり。魚や山菜など、新鮮な旬の旨みも能登の味、もう一方で手間隙かけて時間まで素材の中に取り込んで旨みを仕込む発酵食も能登の味。たとえば地酒を飲みながら、「いしりの貝焼き」でもつついていれば、能登に居ることの幸せを心の底から感じることができるだろう。

食の鎖国をしよう。

 交通が発達した文化交流の激しい土地は、伝統文化も次第次第に薄まって、やがてその土地らしさは消えて無くなる。能登は長らく交通の便も悪く、海に突き出た陸の孤島となっていたため文化のるつぼ。だから、能登らしさを何一つ損なうことの無い郷土料理が今に生きている。

先人たちは食材を全く無駄にしなかった。鰤のエラを塩漬けにしたタタキ味噌や鱈のエラを囲炉裏で炙って食べる、なんていうのは他所では味わえないものでしょう。

 いまの時代、確かに都会にいて買えないモノなど多分ない。たとえば美食ブームは魚醤の「いしり」の存在を広く世間に伝え、さまざまな料理の隠し味としても使われ始めた。しかし、都会では本当の能登の郷土の味は味わえない。なぜならそこには能登の人情も、心地よい潮の匂いも、夜の空を埋め尽くす星もないのだから。
 能登の郷土料理を代表するものと言えば、やはり魚醤の「いしり」である。秋田の「しょっつる」、香川の「イカナゴ醤油」を総じて、三大魚醤とされている。わかりやすく言えば、大豆を原料とするのが醤油で、イカの内臓やイワシやサバなどを原料とするのが魚醤である。能登ではさらにその土地土地で「いしり」「いしる」「よしり」「よしる」などと微妙に呼び名は異なるが、すべて能登の魚醤に間違いない。繊細な大豆の醤油とはまた違う、濃厚な風味と旨みにやみつきになる旅人が多い。

 食べ方は、醤油代わりに刺身のタレに使ったり、スープの出汁に使うのが定番。蕨や大根、茄子などを3〜4日の間、「いしり」に漬け込んで作る「べん漬け」※1、ホタテの貝殻を器にした「いしり」の出汁で季節の野菜や白身魚を煮込んで食べる「いしりの貝焼き」※2などは、郷土料理の代表格と言える。
中には「いしり」と聞いて、その癖の強さに敬遠する人もいるようだ。元来各家庭で作られるものなので、同じいしりでもその味は微妙に違う。できればお店に入って、味の違いを知って、納得のいく「いしり」を選んで持ち帰って欲しい。その魅力に必ずや虜になる筈だから。

能登を代表する郷土料理(一例)
いしりの
貝焼き
※2
いしりの貝焼き写真
赤づくり(イカの塩辛)
一般的に塩辛と言われているものを、能登では赤づくりと呼び、それにイカスミが入ったものを黒づくりと呼んでいる。
こんかいわし
イワシを糠漬けにしたもので、昔から能登に伝わる保存食の代表格。糠を落とさず、軽くあぶって食べるのが一般的。
べん漬け
※1
ベン付け写真
鰤大根

ブリの頭部やカマを大根と煮たもの。ブリの旨味がしみ込んだ大根が特に美味しい。

鱈の子付け

鱈の刺身。雄の切り身に、雌の真子をまぶして食べる。

かぶら寿司

かぶらにブリをはさみ、温かい御飯を混ぜて漬け込んだもの。

朴葉めし

「黄な粉」をかけたご飯や赤飯を「朴葉」で包んで、その香りを楽しみながら田んぼのあぜ道で食べます。

昆布巻き

北前船の盛んな往来が能登に昆布をもたらし、根付かせました。

このわた

冬に採れるなまこからとり出した腸管を塩漬けにした珍味。

くちこ

同じくなまこの卵巣を素干ししたもの。「このわた」とともに、かの北大路魯山人が絶賛した逸品。

 



当選者喜びの記念写真