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甘エビ そのトロリとした甘みに惹かれて

甘エビ。正式名称を北国赤海老(ホッコクアカエビ)と言う。以前は傷みやすいことから産地でしか口にすることのなかった甘エビも、ここ20年ほどの間に日本国中のエビ好きに行き渡り、今では冷凍技術の進歩などにより年中その味を愉しめる。けれども、自分の手で殻をむいて生のままつるりと吸い込むのが一番美味しい食べ方。季節はやはり冬が良い。

甘エビ写真

エビ籠

志賀町の富来(とぎ)漁港ではカゴ漁で甘エビを捕る。全15隻の漁船が、1日に1200個のカゴをさらい、多いときで10万〜15万尾の甘エビを漁港へと持ち帰る。その殆どが傷もなく生きたままで。志賀町の富来漁港はここ数年、生きたままで届けられる甘エビの酸素パックの人気が高い。それは甘エビを傷つけないカゴ漁だからできること。新鮮だから刺身にして、トロリとした独特の甘みを存分に味わえる。1月から2月までなら、灰緑色の卵を抱え甘みも増して、まさに絶品の味となる。その後は3〜4月が子を放したもの、5〜6月は中エビと続く。今年もまた、カゴ漁が解禁となる1月6日を迎えると、富来漁港から海老カゴを積んだ15隻の漁船が、漁場へ向かって一斉に走り出す。(※甘エビは底引き漁が解禁となる9月1日から市場へどっと出回ります。)

富来の漁場は砂地が広く、甘エビが棲息する深い場所へは1〜3時間の航行を要する。夜明け前には船に乗り込み、12〜13時間の操業を終えて帰るのは夕方。さらに漁港では甘エビを生かしたままに保つための手間を要する。家に帰り2〜3時間の睡眠の後、また次の1日がはじまっていく。うねりが強い日本海で漁へ出られるのは、冬場で約10日、春場なら15〜20日ほど。水揚げされた甘エビに、富来漁港の漁師達は惜しみない愛情を注ぎ続ける。「生かしておく」こと、それこそが富来漁港に蕩々と流れる考え方に他ならない。それこそが恵まれない漁場で営む富来の漁師が見つけた知恵だと言える。1尾ごとの甘エビに、漁師達のドラマがある。


【取材協力】
エビ籠船団会長 橋本克広さん